おしゃべりのようなもの

記録と記憶です。

ながめくらしつ新作『この世界は、だれのもの』現代座ホール

世界は、わたしのものだと 私は思う。

 

今回私は金曜日の初日に1回だけ観劇した。

1回だけでは足りなかったと思う。

 

見始めて思ったのは「ダンス公演のようにも思えるなぁ」だった。私の感度が落ちているのかもしれない。

ただ、とにかく暗く重くて、このまま救いがなかったらどうしようかと思っていた。(杏奈さんの最後の踊りに救われた。舞台を超えてきてくれてよかった)

 

見ていると苦しい。そして、続く技の数々。宏次郎さん、素敵だなぁ。

宏次郎さんとあこさんは、たまにどちらがどちらかわからなくなる。それがたまらなく怖くて、恐ろしさを覚えた。

 

みんな、ままならない。そして抗っている。ままならないのは誰で、抗っているのはどっちで、あいまいなまま、正解のないまま、世界は形をどんどん変えていく。

 

「孤独だよ」

 

そんな声が聞こえる気がする。

 

杏奈さんと目黒さんと比べ、どこか幼く見える宏次郎さんとあこさん。幼少期…そうも思えた。

 

ずっと見ていると、なんとなく「もしかして、死にたいのだろうか」と思えてしまった。縄が出てきて、いよいよそうなのだと思った。…だとしたら、創作や作品があって良かった。私は、死なないでほしい。もっとその暗闇を、見せてほしい。

着いて(観に)行くので。

(でもそう感じるということは、死にたいのはわたしなのかもしれない。鏡。)

 

私は、世界は私のものだと強く思っている。

というより、世界は広いけど、私が触れることのできる世界は、私の皮膚からほんの数ミリだと思うから。皮膚の柔らかい部分が擦れるほど、私の世界に入れるのは数少ない人だけ。そしてその中核にいるのは私だけ。

私の世界にいつもいるのは、私だけなのだ。誰だってそう。

 

嫌いな人がいる。もう元には戻らない。

好きな人がいる。失えばもう元には戻れない。

紙一重の人々、世界にはわたし、いつもひとりだけ。

 

遠くで鳴るピアノ。(今回のイーガルさんの曲は、ながめくらしつらしい音楽と演者がお互い関わり合う感じが薄く、伴奏…というより、別の世界にひとりいるようだった。隣人。寄り添わない、どこからか、聴こえるピアノ。)

 

一回の観劇では足りなかった。でも、私の心には問いが生まれた。やっぱり今回も、とても現代サーカスだった。

 

暗闇が優しいと思った。

 

 

 

 

 

スケラボ×ながめくらしつ「咲き、くり返す」|ヴァンジ彫刻庭園美術館(クレマチスの丘)

ヴァンジ彫刻庭園美術館のガラスに描かれた絵(2022.10.30)

わたしは、この美術館が好きだ。

このお庭、綺麗な緑。静かな空気。鳥の声。さらさらと吹く風。

ひんやりとした建物の中。やわらかな曲線の彫刻。特に大理石の彫刻作品はひっそりとした空間でやわらかな光を放つようで、冷たい石なのにどこかあたたかく感じて、柔らかそうに見えてとても好きだ。

 

「美術館で現代サーカス作品をやってみたい」と言う話をきいたとき、「あぁこの場所で観られたら」と思った。

ここのお庭にトラスを建てられたら。彫刻の中を踊るあこさんを観れたら。お花やハンモックの中でまどろむ長井さんのお人形が観れたら。この建物の中でイーガルさんの曲が流れたら。リング、コンタクト、ボール…さまざまなジャグリングを風の音と一緒に静かにながめられたら…。

そんな夢のようなことが、ほとんど叶った。今年の4月のオープニングアクトからはじまり、今回の「咲き、くり返す」で、たくさんの奇跡のような瞬間に出会えた。

ヴァンジ彫刻庭園美術館 開館20周年記念展「Flower of Life 生命の花」オープニングアクト(2022.4.23)
人や道、庭を包み込む手(白い絵の具だけ)

ヴァンジ彫刻庭園美術館 開館20周年記念展「Flower of Life 生命の花」オープニングアクト(2022.4.23)
丸、たくさん

ヴァンジ彫刻庭園美術館 開館20周年記念展「Flower of Life 生命の花」オープニングアクト(2022.4.23)
静かなジャグリング

ヴァンジ彫刻庭園美術館 開館20周年記念展「Flower of Life 生命の花」オープニングアクト(2022.4.23)
心に宿る「種」

ヴァンジ彫刻庭園美術館 開館20周年記念展「Flower of Life 生命の花」オープニングアクト(2022.4.23)
壁とボール

開館20周年記念展では、ヴァンジの彫刻作品の他にも「生命の花」にちなんだ作品が多くある。花、種、命…いろんなモチーフの彫刻や絵、写真、書がある。このパフォーミングアクトはどんな位置付けだろうと「咲き、くり返す」を観ながら考えた。

私には、パフォーマーひとりひとりが花にみえた。

ジャグリングも、絵を描くことも、エアリアルも、ダンスも、作曲も、演奏も、人生をかけて続けている大切なもの。生命と同じくらい大切にしているもの……それらの「命」を私たちの前でみせてくれた瞬間に、パフォーマーは花となって開き、私たちの心に「種」を宿した気がする。感動、驚き、不思議、おもしろい…さまざまな感情は「種」。

きっとその種は、観た人それぞれの心にやどり、やがてどこかで芽が出て、花開く。すると、きっと今度は観た私たちが、誰かの心に種を宿せるだろう…。

この三日間で、きっと多くの人の心に「種」が宿った。

命や人生をかけてきたそれぞれの大切なもの。ひとりではそこで終わってしまうほど儚いものが、人の目に触れることで命(種)として残り、咲き、くり返されるのではと思う。

そんな大切なものを詰め込んだ儚く美しいパフォーマンスを観れた場所が、この天国みたいに美しい夢のようなヴァンジ彫刻庭園美術館で、本当によかった。

 

このパフォーマンスをつくってくれた方々全てに感謝の気持ちです。

「できることならまたこの場所で、くり返しスケラボ×ながめくらしつの公演が観られますように」と、奇跡のような三日月を見ながら思いました。

三日月(2022.10.29)

 

………………

ここからは、写真に公演の感想を載せます。

読んでいただけたら嬉しいです。

生の花びらとティシュー(2022.10.30)

愛実さんがくるくると空で舞い、スカートがお花のように咲き、この花びらがぶわっと落ちていく、この瞬間が忘れられない。
ティシューの艶やかな色が、最後、照明によってモノクロになる瞬間「花の最期」だと思った(ユカシさんの絵画のタイトルの通り)。
ただ、その花が最期をむかえても、命はまたくり返す。

いつかその誰かが死んでも、この作品が、ジャグリングが、現代サーカスが、音楽が、絵が、ダンスが、残りますように、という願いや祈りを感じた。

 

ボールと絵(2022.10.28)

絵をいっしょに地面に置く瞬間が好きだった。私も参加させてもらって嬉しかった。

私はコロナ禍に入った頃からながめくらしつを知り「…の手触り」3部作を通して、スケラボと出会うことができた。
触れられなかったあの頃と比べると社会全体で人との距離がまた少しずつ近づいてきているように感じるけれど、不思議とスケラボとながめくらしつのつくる作品は、パフォーマンスと観客との距離が「…の手触り」の頃からずっと変わらないように思う。
それはきっと、“作品(パフォーマンス)対 観客”ではなく、作品の中にわたしたち観る者を置いてくれているからじゃないかなぁと思う。
秋の夕暮れの広い庭園空間でも、美術館という美術作品がある空間でも、ラクーンという廃墟のようなひんやりとした空間でも、私たちを作品の中に招き入れてくれる。
このやさしい芸術が私は大好き。
これからも、さまざまな作品の中に招かれたいなと思う。
 

鳥の絵のシャツと月(2022.10.29)

近づくと、鳥だった。私はユカシさんの絵が好きだ。

 

コンタクトボールとシャツ(2022.10.29)

お洋服をかけるのが好きだ。コンタクトボールが好きだ。

17時の鐘のとき、目黒さんのコンタクトでよかった。静かなジャグリングと時報に合わせたイーガルさんのピアノの音。

そして、この美術館の壁に映る影。写真ではシャツだけど、公演中にエアリアルのふたりの影が映っていたのが本当に美しかった。

美術館の中のやわらかな彫刻たちと比べてコンクリートの無機質な壁だけど、だからこそ彫刻が引き立つんだなぁと、壁に映る美しい影を見ながらぼんやりと思った。

 

ボール(2022.10.28)

ながめくらしつをこの美術館で見れて本当に嬉しかった。今回の音楽も本当に好き。いい楽曲だし、素敵な演奏だった。

明るくてキラキラしている曲は少し珍しい。私は「こもれび」というイーガルさんの曲が好きなんだけど、少しそんなような明るさだと思う。お花のような、命のような、明るい儚さ。この楽曲をまた聴きたい。

(ビュフェ美術館のあの天井の高い部屋で、生のピアノでのパフォーマンスもいつか観てみたい。)

 

………………

 

またここで、みられますように。

幸せでした。

【瀬戸内サーカスファクトリー】Voyage

静岡にて、瀬戸内サーカスファクトリーの現代サーカス「Voyage(ヴォヤージュ)」をみました。1日目、2日目と両日観ましたが、時間帯や外の明るさによって雰囲気や見え方も違い、美しかったです。

 

衣装は途中でかわりますが、どちらも白(少しだけオフホワイト)くて、最初の衣装は中にライトが設置されていて美しく光っていました。衣装とっても好きだったなぁ。

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瀬戸内サーカスファクトリー「Voyage」

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瀬戸内サーカスファクトリー「Voyage」

 

一番に驚いたのは、大旗の美しさ。あんなに綺麗に動くのかと感動しました。

1日目の最後、たまたま座っていた席の横を旗が通り、顔の目の前(視界が一面旗の白色で埋め尽くされるほど、本当に鼻の先の場所)をひらりと通ったのですが、触れなかったのです……。大旗の麻風さんのすごさを知りました。きっと、ミリ単位(もしかしたらそれ以下)であの大きな旗を操れるんだと思います。息をするように旗を動かしているし、生き物のように旗を操っているのかもしれないし、自分の体のように操作しているようでした。

旗が動くとこんなにも美しいなんて知りませんでした。また絶対に観たいです。

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麻風さん(大旗)

今回私は久々の現代サーカスで、初めての瀬戸内サーカスファクトリーだったので、嬉しい気持ちでした。

ジャグリング、シルホイール、一輪車、エアリアル、大旗、そして、生演奏(チェロ・パーカッション)。ジャグリングは長岡さん(ハチロウ)、シルホイールは界さん。そしてエアリアルは、CouCouで拝見して魅了された吉田亜希さん(悟空も素敵でした!)。

界さんのシルホイールは、きっと香川でものすごく鍛錬しているんだろうなと思わされる技術で、また今後も観たいと思いました。ハチロウさんのジャグリングも楽しかった。欲を言えばもっともっと観たかったな!!!

亜希さんの目線や姿勢(背中や肩のライン)が私は好き。CouCouで拝見したテキストの作品や使用していたオブジェも好き。また亜希さんを観れて嬉しかったです。

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吉田亜希(エアリアル

 

 

私は現代サーカスの「音楽」も好きなので、一つだけ。

今回のチェロとパーカッションの音楽は、ストーリーを運んでいく上で重要な意味合いもあったかなと思うのですが、作品に合った音色で雰囲気を作っていたと思いました。(特にパーカッションに関しては森の中のような不思議を音で感じさせていた) チェロの作品導入部の音色の作り方も素敵でした。

ただ、一つの作品を通して、主要なメロディーを感じられる曲が無かったと思いました。

個人的にはですが「Voyage」を思い起こすような主要な旋律があったら、よりよかったのかなと。こんな作品だったな、と思い出すときに、視覚(風景、衣装、光、人の動き)と共に聴覚の記憶もあると思うのですが、効果音的な単音は思い出せても、映像とともに時間が流れるような「音楽」が、思い出されにくい気がします。

 

こう考えると、現代サーカスにおける「音楽」の重要性を改めて感じますし、曲があてがきされているような作品は貴重なんだとも再確認しました。

そして、演者の細やかな動きや間、呼吸に敏感に、繊細に音をあてがう音楽家のスキルも、また重要であり貴重なんだなと感じました。今回は、パフォーマーが動き回る広さが広かったから、全ての演者の動きを察知しての音楽作りは難しかったと思うのですが、1回目、2回目の空の色の違いのように、生演奏の音楽の違いも楽しみたかったなとも少しだけ思いました。

(というのは、本当に個人的な感想ではあります)

 

地元静岡で良い作品を観れて嬉しかったです!

そしてこういった社会情勢下で無事に開催してくださったことを、演者の皆さま、制作の皆様、スタッフの皆さまに感謝いたします。ありがとうございました。

 

ながめくらしつや瀬戸内サーカスファクトリーなど、多くの現代サーカス作品がこれからも日本で生まれて活発になっていったら嬉しいなと思います!(もっと観たい!!!)

 

使われている曲を調べてみた件

フィアース5を観てきましたので、使用された楽曲は何かなと調べたことを書いてみます。(趣味全開です)

なんちゃって音大卒でクラシックを勉強していたはずなんですが…本番を観ているときから、ああ聞いたことあるけど何がどの曲なのか全然曲名が出てこない…という状態でしたので(勉強不足の在学中の自分を殴りたい…)、初心に返って勉強しなおそう、と思います。

 

使用曲を知りたい(あくまで私調べ)方は、この下の使用されていた楽曲だけご参照ください。(まだわからない楽曲あるはずなので、追記予定。)

なお、クラシック楽曲以外は、アルチュール・ビゾンさんの楽曲が使用されているとのこと。ラファエルさんの作品では、アルチュール・ビゾンさんが作品に当てはめて曲を作っているそう。ながめくらしつの目黒さんとイーガルさんみたい!

 

そしてこれまでは、使用曲はイーガルさんに聞けばわかったし、楽曲解説してもらえたからとてもありがたかったね。(痛感)

 

 

 使用されていた楽曲

 

 

いま私がわかっているのはこのような感じです。検索してぜひ聴いてみてください。余韻が凄いよ。

 

さて、ここからは私の奮闘記とともに、使用曲のこと知ろう!

どんな曲か興味がある人、お時間ある人だけどうぞ!

 

 

 

歌劇「椿姫」第1幕 前奏曲 / G.ヴェルディ

これ、探すの大変でした。私の無知ゆえ…こんなに有名な歌劇(オペラ)の序曲を血眼で詮索する羽目に。

・私が覚えていたこと

弦楽器…ヴァイオリンから「ドーシードーレー」みたいな感じではじまるね。何これ、弦楽セレナーデ??

ダメすぎる記憶を頼りに検索しましたがノーヒット(そりゃあそう)。もちろん弦楽セレナーデな訳はなく(全然違う曲)、冷静になってもう一度記憶をたどる。もしかしてその後の展開と幕が開けるこのシチュエーション…オペラっぽい…そうか、序曲か!?となって、ひたすらに様々なオペラの序曲を聴きまくる。そのうちに、ヴェルディの作品にたどりつき、「これは響きがヴェルディだ!」と、山を張ることに成功(笑)

ヴェルディのオペラを聞くとビンゴでした。椿姫かーーーーーー!!(スッキリ)

 

ここで椿姫についてWiki先生に教えていただく。

ja.wikipedia.org

原題は「堕落した女(直訳は「道を踏み外した女」)」を意味するLa traviataですって。椿姫は日本での名称かな。なんつータイトルだ。

オペラの前奏曲からフィアース5の幕が開けるなんて素敵ですね。おしゃれだ。そして、この最初の弦楽器の響き美しいですよね。とっても好きです。

そして、目黒さんがボールで音ハメする「テッテッテッテーレテーレ」のところ、いいですよね。

 

 

 

では次。

 

Le Brio / Big Soul

もはやこちらは、偶然見つけました。きっかけは「フランス語でフィアース5のこと検索すれば使用曲か、ダイジェスト動画が出てくるんじゃないの?」という浅はかな動機。怠惰。甘え。

で、見つけた動画。日本版のトレーラーは、子犬のワルツ(ワルツ第6番 変ニ長調 op.64-1 / F.ショパン)でしたが、こちらはこのノリノリのサウンド!知りたかったクラシックの使用曲や音源はなかったけど、この動画に使用された楽曲を詳細情報から見ることができました。(ちなみにカンパニーの公式チャンネルにも他の動画はなかった)

youtu.be

 

youtu.be

 

かっこいいね!!!!!

さて、Big Soulさんについてはタワレコ先生に教えていただきましょう。

米国サンフランシスコで結成された、女性ベーシストを含む3人組。90年代前半から地元での活動を開始し、95年に『Big Soul』でデビューを果たした。96年にフランスへと拠点を移し、2002年に発表した『Funky Beats』が同国でヒットを記録。収録曲の「Funky Baby」が日本でスズキ「スイフト」のCMソングに起用されるなど、話題となった。ファンキーでいながらもどこかキャッチーな、耳に残るサウンドを聴かせる。

歌詞も見てみたい。

Branchez la guitare(ギター)
Entonnez le tambour(ドラム)
Moi, j'accorde ma basse(私、ベースをチューニングします)
Un, deux, trois, quatre !(1 2 3 4!)

Nous faisons
Un vacarme
De tous les diables
Chanter juste
Ou chanter faux ?
Je m'en fiche
Je préfère le rock
A la musique classique !

Edith Piaf
Ne regrette rien
Où est la discothèque ?
Monsieur ?
Je suis allergique
Au jazz
Passez s'il vous plaît
Sur le juke-box !

Mais qu'est-ce que tu fais ?
Tu fais le rythme
La cadence ?
La chanson alors ?
Musique moderne
Populaire
C'est une rengaine
A la mode


Allons enfants
Foudrez-vous !
Branchez les guitares
Chauffez les guitares
Je m'en fiche
Je fais le rock
Allons enfants
Jouez !

Branchez les guitares !
Le brio

 

ちょっと翻訳は冒頭で諦めました。とにかくノリノリの曲です。ここのシーンすっごく好きだったな!フィアース!イエーイ!みたいな。

Apple Musicにもあったのでおすすめです♪ ドライブ中、踊りすぎに注意。

 

さて次は、ポストトークでも話題だったラ・カンパネラ!

超絶技巧といえばこの曲。アーティストの方々の技術の高さを超絶技巧の楽曲を使用することで表現してる。凄いなあ。

 

 

ヴァイオリン協奏曲第2番 第3楽章(La Campanella) / ニコロ・パガニーニ

La Campanella / フランツ・リスト

これ、私もちょっと何言ってるかわからないんで、Wiki先生にお願いしよう。(誰かに怒られそう。もっと勉強すべきでした。)

ja.wikipedia.org

つまりは、ラ・カンパネラはいっぱいあるよ

そして私が分かることは、目黒さんとまゆむさんのデュオシーンではヴァイオリンのラ・カンパネラ、その後のみんなパウダーまみれの踊りのときはピアノのラ・カンパネラ。(だったような気がします。私の脳内音源があってなかったらごめんなさい)

特にこの曲は演奏者によってだったり、なんだりで、テンポや奏法などがフィアース5で使用されたものに近かったり、全然違ったりするので、いろいろ聴き比べてみるのが良いかなと思います。お好みの超絶技巧を楽しもう。

 

 

さて、次はトレーラーでも使用されたこの曲!ショパンきた!(好き)

 

 

ワルツ第6番 変ニ長調 op.64-1 / F.ショパン

通称「子犬のワルツ」です。かわいい曲。ショパンはいいですねぇ。

これもいろんな奏者の聴き比べて、好みのものを探すと良きと思います。

せっかくなので、トレーラーを見ましょう。改めて作品を見てから見るとまたいいね。

youtu.be

 

以上、今のところはここまでです。

その他にも多分あるんです。でももう思い出せなかったり、探せなかったり。特に一番最後の幕がおりる(いやむしろ幕が上がってサーカスのスタートか)シーンの曲はなんなんだろう。合唱が入ってて、多分ハ短調(C-minor)だった気がするの。そんなのなかなかないからすぐわかりそうなんだけれど、まだ見つかってないのでわかれば追記します。もしくはどなたかヒントを…。(これを知りたくて、今日はモーツァルトのミサ曲を聴きまくった。それともまたオペラなのか…?椿姫?え、オリジナル…?)

 

そんなわけで使用楽曲、あくまで「私調べ」なので記憶が違っていたり間違っているかもです。(そして何かどなたかに少しでもご迷惑かけそうなことがあれば、すぐにこの記事クローズするのでお声がけください!)

 

愛実さんのシーンとか、杉本さんのシーン、スパイダーの部分がわかっていない気がします。どうかな。オリジナル音源かな。

もし逆に私が外国に生まれて日本の現代サーカスを見てイーガルさんの楽曲を好きになったとき、調べるのって大変なんだろうなって思いました。だからやっぱり、どんな楽曲も一期一会です。音楽も作品も、出会いは大事にしたいなと思います。

 

French Circus Focus 2021 フランス×日本 現代サーカス交流プロジェクト 『フィアース5』

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フィアース5

フィアース5を観て数日経つ今も、未だ興奮と余韻が消えない。

それほど衝撃的で、幸せで、人生を変えてしまうような作品に出会えた。

 

今回の公演は、日本の若いサーカスアーティストと、フランスのサーカスカンパニー「カンパニー・ルーブリエ」の演出家ラファエル・ボワテルさん(さん、をつけたい!実際のお人柄を知り、とてもチャーミングで可愛らしい方で、日本が大好きと言ってくださって嬉しかった!愛を込めて。)による作品で、日本の諺「七転び八起き」をモチーフにされたもの。壁にぶちあたっても、人と人との関わりにより何度でも立ち上がる「不屈の精神」が描かれている。

setagaya-pt.jp

 

これまで私は、目黒さん演出の現代サーカスをいくつか(たったいくつか!)を観てきた。彼の作品が好きで、現代サーカスの世界に魅了された。作品が伝えるエモーション、あてがきされた美しい音楽の数々、私自身の心に残る問い・・・。輝かしくてきらびやかだけではないその奥行きに、こんなに素敵な世界があるのかと衝撃を受けた。

そんな目黒さんが「好きすぎて全公演見た」というラファエルさんの作品。そして目黒さん本人も出演する。こんな作品が、今この日本で、公演が実現するなんて。その時間軸に自分が存在できた奇跡、そして、パンデミックの最中に、公演が実現したそのことだけでも涙が出てしまうほどの喜びでした・・・。

 

作品についてはどこからどう感動を語ればいいのか。

冒頭、舞台の中央手前に置かれたひとつの照明(電球)に観客の視点が誘導され、暗闇に慣れない視界の中ヴァイオリンの音色が響く。アーティストの歩く気配。ここはサーカス小屋。さあ、舞台の幕が開ける。

音楽(歌劇「椿姫」第1幕前奏曲)に合わせて、アーティストたちは自分たちのパフォーマンスのウォーミングアップを始めるかのように動き回る。ダンス、エアリアル、アクロバット、ジャグリング、綱渡りなどさまざまなパフォーマンスを得意とする人たちが舞台にいる。

 

まずは、綱渡り。ラファエルさんのお話によると、健斗さんはこの演目に向けておよそ5ヶ月でタイトロープ(ピンと張った状態の綱を使用した綱渡り)を習得したという。そのことを知らないにしても、驚くほど素晴らしいものを見せられているのが分かる。不安定な足場(それも、公演はじまってからテクニカル(黒い洋服)の方々と演者がセッティングしたんだよねえ・・・というそれも衝撃。)で、慎重に綱を渡る、落ちそうになる(演技。演技でできるのは高い技術があるからだなあと驚く。)、アクロバティックな回転、脱げるズボン(笑)、どれもこれも素晴らしかった。それと共に、杉本峻さんのなんとコメディーなこと!身振り手振り、表情…2階席からでは見えないはずなのに、手にとるようにどんな顔をしているか分かるようだった!(杉本さんは、アクロバットエアリアル(幅広の紐)のパフォーマーであると同時に、マイムの担当でもあるのかなと、勝手に思いました。素敵だった。)

杉本峻さんが作り出す雰囲気と健斗さんの綱渡りに釘付けになり、そして笑った!無音の中で繰り広げられる世界(音楽がないのも良かった)。ズボンを失いシャツの裾を直してお腹を隠す健斗さんに、徐に自分の白いズボンをあげる目黒さん(あなたもパンツ一丁になるのね笑)。そこで急に、クールでロックな明るい曲(Le Brio/Big Soul)が流れて、踊り狂うフィアース5!(と、テクニカルの2人!このシーンだったかな、安本亜佐美さんがロープにぶら下がるのがかっこよかった!)健斗さんの綱渡りを煽る!盛り上げる!手拍子したい気持ちを我慢した。このシーン、すごく好きです。そして、目黒さんが綱を緩めているのに、綱に乗ったままの健斗さん、凄かったなあ。

(…こうやって1シーンずつ書いていくと、キリがない気がしてきました笑)

 

ロックにキメた膝立ちポーズのあとは、健斗さんが苦しむ。真面目さゆえなのか、強迫観念なのか、もっともっと、と高きを仰ぐ。身体が止められない。綱の上に存在できない今、バク転をするように体を動かす。周りには応援される。そして、もうやめなよと心配もされる。常に命の危険と隣り合わせの極限状態で技を極めるアーティストに、その場所(綱)をおりた今も心が休まる暇などあるのだろうか・・・。見ていて苦しくなる。

そして、重く響く音に乗せた愛実さんのエアリアルシーン。最初はほとんど暗闇で、愛実さんの姿は銀色に輝くリングと共に照明の加減によってちらりちらりとしか見えない(特に2階席からはそのように見えた)。少し照明が明るくなり愛実さんが何をしているか見えるようになる。愛実さんはリングを扱うときは自然でいられるのに、道具から離れると動きが不自然になってしまう。椅子に座ろうとすると、座り方もわからなくなる。どうするのが自然なのか、道具を降りるとわからない。サーカスをしていることが常で、それが日常。椅子に座る、そんな簡単なことさえ忘れてしまうほどアーティストはサーカス一色の生活をしているんだなと、思わされる。

そんな愛実さんが椅子からリングに飛び乗るシーン!!ここの美しさが忘れられない。伸びやかな脚。リングに乗るとその身体は自由で、自然で、伸びやかで、息をしていた。綺麗に開脚しリングにぶら下がる姿。本当に印象的でそれだけで美しくて泣きそうになる。あんなに「静」の姿だけで魅せられるのは凄いなあ。

リングの上では激しくもがいたり、回転したりと高度な技の数々もあった。健斗さんのシーンでもそうだけれど、それぞれのアーティストの皆さんの技術が高いからこそ、困難や試練、美や調和、成果を、技を持って表現できていると強く感じたし、強迫観念などの精神的な追い込まれ具合(ある意味での恐怖)を強烈に伝えてくれているんだと思う。

そういう意味では、見ていて少し恐さを感じるサイコパス感は、目黒さんのジャグラーとしてのキャラクターに強く現れていたと思う。まゆむさんの腕や手に興味を示し、ジャグリングをしたい衝動を止められない(人としてのまゆむさんには興味すら示さない)。モノへの興味や好奇心は、モノを扱うパフォーマーであるジャグラーらしいキャラクターそのものだった。モノの動きって楽しい!こうすれば落ちるんだ!投げれば動くんだ!…純粋無垢なモノへの興味ゆえに、まゆむさんを扱った後にボールを得た彼が、まゆむさんをぽいっと捨てるシーンは印象的。その後に椅子をこめかみでストールするシーンや、みんなで椅子に座っている(影が印象的な)シーンで他の人たちがチュッチュしながら色めきだつ中、みんなの腕や椅子の移動の虜になっているシーン、そして、健斗さんがもがき苦しむ2回目のシーンでは、苦しむ健斗さんを気にも止めず、自身の手をマジマジと見つめていたりなど、そのモノへの集中や執着は、アーティスト特有の孤高を持するその姿を描き出していたように思う。(あくまで個人の感想です)

ボールジャグリングソロシーンでもそれは伝わってきて、みんなでパウダーまみれになってラ・カンパネラ(ピアノver.)の演奏に乗せてユニゾンで前に後ろにおっとっと、と踊るシーン(私はここがすごく好きです。そして、目黒さんがあんなに綺麗な開脚をするなんて驚きました…!)の後に、5ボールから徐々にボールが減っていってもジャグリングをやり続ける姿は、周りの応援なども聞こえていない様子で、ただボールだけに集中している。途切れる自分の荒い息にすら気がつかず、見ているこちらに「ああ、ボールを手にしたら死ぬまで投げているんだろうな…」と、やはり一種の恐怖を感じさせた。そして、あまりに当たり前に投げるから忘れてしまいそうになるけれど、ボールを落とさない正確性や技術があるからこそ、あのシーンは成り立っているなあと思う。あと、どちらかといえば冷静で常に周りを把握して空間を扱うジャグラー(と私は感じる)の目黒さんが、ああいったサイコな一面を舞台で出すのは、役柄もあるけれど、何か普段は見せていない部分、裏(内)の目黒さんに出会えたような気がして面白かった。ラファエルさんがポストトークで言っていた「アーティストがキャラクターを自分のものにしていった」というのがよく当てはまるように感じる。キャラクターを自分に当てはめていくのか、自分がキャラクターに憑依していくのか・・・全身全霊をかけて創作に打ち込んだからこその、あのキャラクターと思う。物凄く、良かった。

 

その後のシーンからは、杉本さんのアクロバットソロのシーンで、幅広の紐に片手でぶら下がり空間をぐるりと回る姿が、とてもダイナミックで美しかった。その中心に椅子が並んだり、周りではそれぞれのアーティストが自身の技をやっていたり。なんとなく杉本さんの幅広の紐の動きそのものがサーカスのテントのようにも見えてきて、面白かった。杉本さんのアクロバットエアリアル)は、力強くて圧巻で、あのユニークな雰囲気はどこへ!?と思うようなかっこよさ!でも明るいキャラクターはそのままで、その明るさゆえ、もっともっとと言われるがまま、期待を受ければどこまでも高度な技をおこなってしまう様子も印象的だった。杉本さんの高い身体能力と日本人離れした雰囲気(表情)。どちらも本当に魅力的で、唯一無二な存在感だった。これからもさまざまな作品で杉本さんをを見たいと思ったし、魅せて欲しいと思った。3日目の最後にサーカス伝統衣装を着るシーンで「っしゃ!」と声が漏れていたとき、杉本さんはこの作品のキャラクターそのもののアーティストで、素敵な舞台人なのだなあと思った。素敵な人だと思いました。

 

(どんどん感想が長くなり、収集がつかなくなってきました。すみません・・・。)

 

椅子にみんなで座って、影が映し出されるシーン。

ここは、2階席から見ると最高の眺めで影が本当に美しい。昔のフィルム映画を見ているようだった。その理由は、なんと1階席で観たときに判明して、安本さんの照明テクニックが重要だった。光の量を音楽(ワルツ第6番 変ニ長調op.64-1 /ショパン:トレーラーの曲!)にきちんと合わせてカチカチと細やかに調節している。これに気づいたとき、あぁ、なんて幸せなんだろうと思った(笑)影は綺麗だし、照明は綺麗。それはもう幕が開けたときから感じていたけれど、こういった細やかな演出やテクニカルな技術は、私が知る由もないレベルで方々で繰り広げられていたんだろうし、そういった小さな何かの結晶が集結して、今目の前で見ている作品が感動として私に襲ってきているんだな・・・って。そう思ったら、幸福でした(情緒大丈夫かな、私…笑)。

 

(気持ちが高まって感想が盛り上がりすぎているような気がするので、おかしな部分があれば後に追記・修正したいと思います。今はこのような熱量で申し訳ありません。)

 

最後に、やはり一番心を打たれたシーンについて書きたいと思う。

まゆむさんがロープにつられて5人で支えられるシーン。ラファエルさんのいう「スパイダー」の場面。「スパイダーは、人生におけるメタファー(隠喩)」と言っていた通り。壁にぶちあたり、立てないほどの苦しみ。立とうとしても誰かに何かに、足を引っ張られてしまう、取られてしまう。手を差し伸べてくれる人はいる。応援にすがろうとしてもすがれない。応援なのにときには攻撃に感じる。だんだんと相手の言葉が聞こえなくなる…。そんな強烈な苦しみと、もがく姿。高く上がった場所からのまゆむさんの叫びは、人間の心の叫びだった。私も苦しくて泣いた。

下でまゆむさんを釣り上げるアーティストの皆さんも、とっくに体力は消耗し、腕の力も脚の力も極限まで来ているはず。余裕のある人なんていない。それでも紐を絶対に離さない。力が強くかかる部分を支えるときには、より、力を込め、体制を整え、まゆむさんを支える。まゆむさんも疲れ果てているはずだけれど、最後は鉄骨を掴み、移動し、ぶら下がる。音楽が切れるまで手は離さない。音とともに、琴切れる。…クライマックス(と私は思うのだけど)で、ここまで身体の極限を魅せる演出に、感動と恐ろしさすら感じた。本当に、サーカスでしか表現できない人生の姿があるとこのシーンを見て思った。

 

そして最後は伝統サーカスの衣装を手にし、皆さんが衣装を身に纏う。「はやくー!」の山本さんの声にはとっても癒された!

そして、砂の袋がつるさげられ、安本さんの手によって(コントロールすごい)旋回する。大きな砂時計に見えた。人生の砂時計が、落ち始めた。スタートの瞬間。(伝統サーカスをイメージしているらしい。なるほど。)

フィアースの5人が並ぶ。影が大きく映し出される。前に歩む5人。手を繋ぐ。フィアース5の幕は閉じるのだけれど、これは紛れもなく「幕開け」のシーンだった。

 

 

今回、若くて高い技術を持ったアーティストの皆さんが、ラファエルさんとともに今この時代にフィアース5日本版を作り上げた。水面下で動いているときから、オンラインでのオーディションであったり、来日後の隔離期間があったりなど創作は難しいものになったとおしゃっていた。パンデミックが世界的に起きている今、私のような人間でも生きることが困難でただ生きているだけで難しいことがたくさん起こるが、アーティストの方々によってはより大変な状況だったと思う。

そう言った現代でフィアース5が上演されたこと。フィアース5のもつ「不屈の精神」は大きな感動と希望と喜びをくれた。人生の壁に直面しても何度でも挑戦したいし、人と人との交流は諦めたくないと、私も強く思う。

 

これまでの人生の、鍛錬、成果、更なる練習、技術をみせてくださったアーティストの皆さん、ありがとうございました。そして、日本に来てくださったラファエルさん、ジュリエッタさん。吉田さんをはじめとした多くのアシスタントや関係者の皆さまに感謝の気持ちです。

とても楽しい公演だった。無事に終わってよかったと思います。

【映像上映・パフォーマンス】悟空〜冒険の幕開け〜

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世田谷パブリックシアター

本日、福岡の大千秋楽も迎えることと思うので書き残そうと思います。

(今回はパフォーマンス部分にフォーカスを)


真ん中に固まる肌色の塊。

あれはなんだろう?人?

綺麗な台形は本当に人に見えなくて、シルホイールのガタッという音で動き出すまで、異質な、でも体温を放つ不思議な塊に、私は魅了された。

 

映像上映(FOCA)の悟空でも、白い丸の中に人が入り軟体、アクロ、様々な動きを織り交ぜて人が蠢いていた。それを思い出すようなパフォーマンスではあったけど、目黒作品の人の動きは、全て音楽や空気、モノの動きがきっかけで人が動く、そんな全てに「意味のある動き」に思えて、私はそれが好きだと思った。

 

油布さんのシルホイールを初めて見た。正確には油布さんのパフォーマンスを初めて見た。圧巻だった。力強さと美しさ、技の安定性(私、シルホイール全然観たことないのにすみません)、どれも驚いてしまった。また必ず観たい。

 

亜希さん。Coucouで初めて拝見し、その作品の世界観と動きの美しさに惹かれた。そのときはテキストから作品が作り上げられるという不思議なもので、美術も観たことがない造形美(あれ大好き!)で、とても好きな作品だった。奥行きが豊かな作品で、空間をころころと動き回ったり静止したり寝転んだりぶら下がったり。目線も仕草も好きで、また観たいなって思った。

あこさん。あこさんは、昨日の手触りの案内人、こころの手触り、そして、ひとり、ひとり。いろんなあこさんを見た。あこさんはどの作品でも見せる顔が違って、どこか中性的で、こどもやモノ、赤ちゃん、母親、友達…いろんなものを映し出してくれる。私は主に目黒作品でのあこさんを観ることが多いけれど、映像作品「或る椅子の、つぶやき」のあこさんも大好きだった。(或る椅子と、ワルツ好き!)あこさんの「踊りたい」って心がどの作品を見ても伝わってくる。踊りが好きで、これまで真摯に向き合ってきたことが伝わってくる。エアリアルをするあこさんも好き。デザインを作るあこさんも好き。アクセサリーや刺繍に取り組むあこさんも好き。好きなものに取り組んでいるあこさんが好き!そして、作品でみせる無表情も好き。

 

今回の悟空では、亜希さんとあこさんの二人のシーンがある。エアリアルと踊りをする二人ならではの演目。奥行きが豊かなパブリックシアターで、布というひとつの長い繋がりを二人で操る。布を身に纏う。登る。回る。布から対角線上に離れた場所で踊る。離れていてもどこか繋がっている。モノを介して動きを魅せる目黒作品ならではの感覚かなと思う。その二人の繋がりが美しかった。二人のシーン、本当に綺麗だった。

今回は映像配信でも使われていたようにエアリアルの上げ下げを劇中で行っていた。それによりできることの範囲が広がっていて、あ、あの装置すごいなと思った(綺麗だし、楽しい)。もっと上げ下げ装置使った作品が見たいな。(危険も伴うと思うので抜群の稽古・本番の環境が整ったらいいなぁ)

 

そして今回の音楽。ピアノ、パーカッション、ヴァイオリン、チェロ、クラ。めちゃくちゃ好きな編成。イーガルさんの作るオケ(室内楽)作品好きだなぁ。目黒さんとのタックは何年なんだろう。あまりにお互いを知り尽くしていて。お互いに合わせつつ、好きなことをして、あんなに合わさるのはなんなんでしょう。音楽も作品も作ることって容易じゃなくて、生み出すのは大変なことなのに。

 

 

今回の演目で好きだった箇所がある。亜希さんがエアリアルで上からくるくるっと高速で落ちてくる技(名前がわからずすみません)。そのとき、無音なところが好きだった。

 

技をみせるパフォーマンスなのか、人をみせるパフォーマンスなのか。

私は後者が好き。大技も、その技の凄さも、その演者のもつ魅力のただひとつ。演者をより美しくみせる目黒作品が好きだし、演者の方々の見せてくださる人間美が私は好き。そして、作品を美しく魅せるイーガルさんの音楽が好き。

亜希さん、あこさん、油布さん、お疲れ様でした。本当に素敵でした。また観たいです。

 

そして、このご時世で様々なことがある中で、まずは大千秋楽まで終わったこと。本当にお疲れ様でした。

早く世界が落ち着きますように。

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目黒陽介、安岡あこ出演「ひとり、ひとり」(作曲:イーガル、演出:目黒陽介)

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座・高円寺

 

静かに会場に入ってくる ひとり の人。

これが作品の幕開け。

 

ちいさなこどもの泣き声。パンフレットをじっと観て気がつかない子も。

開場からたった5分後。

だんだんとその ひとり の存在に気づかされる私たち観客。

 

何も持っていなかったその ひとり のもとにボールがひとつ、ぽんっと落ちてくる。

そのボールを不思議そうに、でも自然に受け入れてジャグリングをしはじめる。

 

 

幼き頃の、ジャグリングに出会ったばかりの目黒さんが浮かんだ。14歳の少年。ボールに出会った目黒さんは不思議とジャグリングに魅了され、ひとつ、ふたつと増えていくボールを投げ続けた。

誰が目黒さんにボールをくれたのか。どこからボールはやってきたのか。目黒さんがジャグリングに出会ったきっかけを私は知らないけれど、ひとつのボールで14歳の目黒さんの人生が動きはじめたように感じた。

 

あこさんは、無性別の誰かであって、ジャグリングに出会う前のもっと幼き頃の目黒さん本人にも見えたし、むしろジャグリングという概念が実像化したモノにも思えた。

 

互いの存在に気付いた後は、気配を感じながら壁の上と下で戯れる。

そして、壁の上に並ぶと、無邪気に遊びはじめた。ひとり、ひとりのメインテーマに乗せて、「ジャグリングって楽しいよ!」そんな声が聞こえてきそうな気がした。

 

すると、壁の上にボールを並べはじめ、端からひとつずつ落としていった。その後、あこさんも壁からすとんと落ちた。

地上におりた後は、しばらく壁に貼りつくように動き、壁から降りた目黒さんは、あこさんとボールを通して壁の下でも関わり合った。リズムのいい曲が心地よかった。

その後、あこさんは次第に壁から離れて行くようになる。目黒さんも、ボールの数が増えていくのと同じように年を重ね、無邪気だった少年が少しずつ大人に近づいていくように思えた。

 

成長していくにつれて起こる様々な変化。ジャグリングとの関係性。より高度な技が混じりジャグリングが見ている私たちに与える印象が変わってきたように感じた。「楽しい」の先。

そしてさらに先に進むと、人との関わりや、自身の想い、作品…より多くの変化が起こる。少年から青年へ、そして大人へ変わって行く。これまで目黒さんが作ってきた作品の数々を感じた。

 

そして増えたボールが徐々に減っていく。同時にバランスが取れなくなるあこさん。

少しずつ、何かを減らしていく。大切なものだけが残っていけばいいなと、私は願った。

 

そして、無音。たったひとつ残ったボールを、そっとあこさんの肩に乗せる。あこさんの頭に目黒さんの手が触れたとき、私は初めて「触れた」と思った。ここまでは体同士が触れていても「関わり」に過ぎなかったものが、はじめて意思を持って触れたように見えた。あなた、という存在。ずっと自分といた、存在。大切な、存在。その全てがあこさんだった。

あんなに強烈に「触れる」という感覚を見ている私たちに伝える、凄さ。目黒作品の凄さを感じた。

 

そして、ボールで繋がっていたひとりとひとりが、それぞれ身体だけで繋がっていく。ジャグリングやモノを超えて、「存在」を受け入れて、包み込んでいるような気がした。

 

最後、あこさんがまた壁に帰って行くそのとき、冒頭のメロディーが再現される。幼少期のジャグリングを始める前の目黒さんを改めて思い出す。あの頃の彼は、もういない。でも、ジャグリングとの出会いが、今の自分に繋がっている。

ひとつだけ残るボールが、その気配を感じさせる。

 

 

勝手な解釈ではありますが、私の感じたストーリーでした。

ボールと出会った男の子が大人になってつくった作品が、この公演を通していろいろな人に届いているんだなと思ったら、冒頭から涙が止まりませんでした。

目黒さんにボールをくれた何か、誰か、ありがとう。

 

そして、この作品を生んだ目黒さん、出演者のあこさん、大事な音楽を作曲したイーガルさん、壁をつくった美術の照井さん、ありがとうございました。

 

ジャグリング、ダンス、音楽、作品…自分を形成するそれらが、自身とイコールに感じるであろう世界で生きる皆さんが、幸せに穏やかに過ごせる世の中でありますように。

 

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今回の曲目:

練習曲集「ひとり、ひとり」(作曲:イーガル)

 

1.けはい

2.ひとり、ひとり

3.リズムにのって

4.夏のにおい

5.ひとりとひとり

 

ひとり、ひとりはもちろん好きですが、夏のにおいもとても好きな曲だった。