ながめくらしつ連続公演「…の手触り」〜こころの手触り〜 を観させていただきました。
今回は静岡県在住限定での来場可だったため生での公演を観ることができました。
とてもありがたかったです。
今回の作品は前回の「…の手触り」〜昨日の手触り〜 の次の作品。
今回の音楽は、前回のピアノ1人とは違いチェロとのアンサンブル。40分ごえの大曲、チェロソナタでした。ラクーンという特殊な空間(廃墟のような、元々人がいたであろう手触りを残した不思議な空間です)のなかで鳴るチェロとピアノの旋律は、とてつもなく美しく、溶け込むような音色でした。
チェロとピアノ、すごくよかったです。
そして、美術…大きな絵、紐、布、毛糸…どれも素晴らしかったです。
黄色や赤、ピンクを使用した大きな絵。どんなふうに描いたのかなとみながらワクワクしてしまいました…素晴らしかったなぁ。
作品はひとつの絵巻をぐるりと一周みるような見方で、「変化と選択」がテーマであるとも言っていました。
安岡あこさんの息を飲むように美しい踊り。長井さんによって命を吹き込まれた人形たちの繊細な動き。人形がこの空間に産み落とされた瞬間、何か自然とこみ上げるものがあり、私は終始涙がぽろぽろと止まりませんでした。
途中、人形の目線になって観たいなと思いしゃがんだのですが、ふと手で床を触ると、びくっとするくらいその感触が敏感に肌に伝わってきました。
そのとき気付いたのですが、観ている私たちは、終始歩きながらその世界の中にいて、その間、誰にも何にも触れない。床を歩く靴の裏以外は、ほぼ何にも触れていない私たちは、時には演者の動作だったり、人形などのモノが触れる感覚だったり、後ろや横から降り注ぐ音だったりをより敏感に感じ取りながら作品を「観て」いるんだなと思いました。(それを「観よう」としてたので、床を触った手も触覚が過敏になっていたのかなと思う。もしかしたら床がめっちゃ冷たかっただけかもしれないけど…笑)
そして、前回の作品同様、観ている私たちそのものも作品をつくる一部になっていて、そこにいる全員(他者)の「手触り」に加担しているのかなぁと思いました。
だからこそ、今回の1日目、2日目は明らかに感じ方が違ったように思います。
例えば、音楽。音の揺らぎ、出だしの輪郭(これは私の体感ですけど…)、少しの変化でぐっと会場の空気やパフォーマンスの流れが変わっていく。パフォーマンスと音が溶け合う…。
これはどうしても生でみたからこその感じ方になってしまうのかなと思うのですが、この感じ方の違いは、日毎、明らかだったように思います。
それは音楽だけでなく観客の動きでも変化してしまうし、同じ作品でもその時々で生々しく変化するこの作品は、前回の昨日の手触り同様に、究極のナマモノ…だと思いました。
この連続シリーズは、今のところこの2作目まで、演者同士、触れることなくきました。
今一度「手触り」とはなんだろうって考えてみると、不思議な疑問が浮かびます。
「触れること」への欲はやはり消えないけど、実際に「触れること」は本当に重要なのか…?
触れてしまうことで、単純にわかりやすくなりすぎてしまう。それにより鈍くなってしまう感覚が、「触れない」ことで研ぎ澄まされているのではないか…。
触れてしまったら有耶無耶になる感情。鈍って気づけないような些細な感覚。
自分が体感してしまったら粗末にしてしまうような感覚や、触れたことで安心してしまい薄れる記憶を、「触れない」ことでより鮮明に写し出しているんじゃないかな…なんて思いました。
特に、五感の中でも触覚は、…例えば、普段タオルで手を拭いたり、ドアを開けたり、何かしら触りながら生きているからこそ、鈍くなっていると思う。そのような中で、今何かと触れられない時代だからこそ、観る側の私たちの触覚も、以前より敏感になってるのかなと思いました。
「こういうときにしかやらないようなものをつくってみようかな」と、昨日の手触りの時に演出家目黒さんが言っていたので、演出家の意図としては、「触れないこと」にそのような意味を込めてはいないと思うけど、今回の作品をみて、より「触れない」ことと「触れる」ことについて、考えさせられました。
そして、見る側の私たちにとっても、いま観ることで、より感じることが多い作品なのかなと思います。
次回、3作目は、演者同士、触れるのかなぁ。
あこさんのダンス、とっっても綺麗でした。ずっと見ていたくなりました!!
長井さんの人形たちが大好きになりました。また必ずみたいです!
イーガルさんの音楽、やっぱり大好きです。CD楽しみにしてます!
こみてつさんのチェロ、素敵な音色でした。聴けてよかったです!
目黒さんの人形作品。ものを動かすプロフェッショナルがつくる素晴らしい作品でした。ながめくらしつでした。すごく!
映像作品の公開もとても楽しみです。
目の見えない方でも楽しめるような素敵な音声ガイドがつくとのこと。
言語化が難しい作品だと思いますが、きっと素敵なものができるんだろうなぁ、と思っています。
そしていつか、より多くの人が生でこの作品を見られたらいいなと願います。
素敵な作品をありがとうございました。
最後に、長井さんの言葉を借りて。
『人形と、人間の踊り手の共通点は「こころ」ということか…!』